道祖神にはいくつもの種類があり、単体で合掌する「単体道祖神」、文字碑型の「文字道祖神」、経が刻まれた「題目道祖神」、丸石や不思議な形の石を祀ったものなどバラエティーに富んでいます。
なかでももっともポピュラーなのは寄り添う男女神がレリーフ状に彫られた「双体道祖神」で、松本市周辺の市町村にはこのタイプが多く、これに彩色をほどこした安曇野市の道祖神(写真)は非常に有名です。
また、同じ双体道祖神でも、そこには仲むつまじい男女の「理想の愛」が幾通りにも表現されています。恥じらい気味に手をふれあわせるもの、大胆に抱き合って口付けするもの、慎ましやかにお酌するものなど、神でありながらその振る舞いはどれもきわめて人間臭く、とても親しみやすい雰囲気を醸しています。
さて、珍しい形をした道祖神の代表格として、男性器の形をした道祖神にもあえてふれておきましょう。性器の形とは何とも滑稽でユーモラスな感じですが、よく調べてみるとこれらの中には半ば笑いもののようにもてはやされてきたものがある反面、子宝祈願の対象としてこどもができない女性たちの精神的重圧と必死の祈りを受け止めてきた立派な神様も多いことがわかりました。
現代ではその形状から好奇の目にさらされがちなこのタイプの信仰物も、養蚕における繭玉飾り同様、その背景には苦悩する人々の切羽詰った思いが隠されているようです。
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- 繭玉飾り?を持った道祖神
- 養蚕守護の願いから生じた発想でしょうか?もしかすると持っているのは「繭玉飾り」ではなく、農作物全般の豊作を願った「餅花」かもしれません。いかにも「豊作の神」らしいデザインです。
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- 餅を搗く道祖神
- 杵を男性、臼を女性に見立て、男女の睦事を「餅搗き」に例えた道祖神。夫婦円満の神として祀られたのだそうです。